第二回松下先生による『行動科学ワークショップ in 奈義』
日時:2006.09.02、03
場所:奈義ファミリークリニック&奈義町菩提寺研修センター
参加者:
中山、野中、泉、尾上、堀、安斎、合地、樋口、湯口

病院見学  感想:湯口 賢(医学科3年)
初めての奈義ファミリークリニック(以下奈義FC)にたどり着き、想像していた以上の田舎っプリに驚く時間もあまりなく、松下先生にくっついての外来見学が始まりました。外来見学をさせていただいたメンバーは湯口、安斎、細井の三人でした。内容は奈義FCに外来として来た10人ほどの患者さんと、津山中央病院からの紹介でこれから松下先生が担当をする患者さんの往診でした。僕はまだ大学での病院実習を経験していないので、実習経験というと佐藤先生のクリニックで2回ほど見学させてもらったことがあるだけでした。佐藤先生の所はデイケアを隣でやっているので、そこに来た患者さんがついでに外来に寄ることが多く、そのためメタボリックシンドロームや脳卒中による麻痺の患者さんが特に多い印象を受けたのにくらべて、奈義FCでは土曜の診察ということもあってか、平日には働いていのでなかなか病院に来る機会のない若い患者さん(奈義という地域は超高齢化がすすんでいるのに)が多かったような気がしました。診察にこられた患者さんひとりひとりの感想を述べていくことはここではしないかわりに、奈義FC自体の感想を言いたいと思います。やっぱり一番ありがたかったことは、奈義FCが川崎医科大学の協力の下で立てられているので、教育現場としての施設が充実していることです。はじめに全員で待っていた場所も研修室という名前がついており、20人くらいが集まってミーティングなどができるようなところでしたし、4つある診察室の様子は別の部屋でモニターできて、大学病院のように先生の後ろにぞろぞろと学生が立っていて患者さんがいかにも教育の対象物として扱われているという感情を持ちにくいのではないかと思った。それ以外の効果としては、女性の患者さんが男性の学生が気になるという場合にも使えるんじゃないでしょうか。患者さんの承諾さえあればビデオ撮影して学生が行った診察の反省を後から自分自身で行うことにもつかえると思うので、教育という面ではかなり有用なツールが奈義には存在すると感じました。往診に出かけたところは奈義の中でも山奥にあるお宅で、地域医療に求められるものが少しは体感できた気がしました。
佐藤先生のクリニックで実習させてもらったときも感じたことですが、こんな低学年のうちから少人数で臨床現場を見せてもらえて、そのうえいろいろなアドバイスをもらえるというこの環境に感謝するとともに、もっといろいろなひとの診察をみて、自分の理想となるような形を少しでも見出せたらなあと思いました。

ワークショップ  感想:中山 明子(洛和会音羽病院研修医1年)

松下先生のWSは今まで何度も参加させていただいたのですが、実際に働くようになって自 分には 患者さん自身、家族、そして地域などを見る余裕が全くなかったことに気付きました。 それは1回目の“平井りえ子”さんの症例でのロールプレイでした。 私はこのシナリオで何度もロールプレイしたことがありますが、 恐らく今回が“最低”の医療面接だったと自信があります。(たぶん、学生の時よりも悪 くなっていました。) 患者さんに糖尿病の解釈モデルを聞こうとするあまり、患者さんの思いに注意が向いてい なったのです。 まず患者さんにデータが悪くなっているnegativeな事から切り出してしまい、一気に患者- 医師関係を悪化させていたことに気付きませんでした。(恐らく、私はこのミスを実際の 臨床の場でも繰り返していたことと思います。) 「何だか患者さんとの関係を良くするのに時間がかかる」と感じていたのはこのためであ る気がします。 出だしに『褒める』という事の難しさ、褒める部分を探せる技術が欲しいと思いました。 医療面接の始めに「いいですね」「すばらしいですね」というスキルは努力しないと得ら れないと思います。 たった5ヶ月間という間、外科で周術期の患者さんを、救急外来で急性期疾患を診る毎日 だったので とにかく展開の早い患者さんを見ていて、ほぼ患者さんを見られていませんでした。 どちらも慢性期の継続した医療ではなかったので、緊急性の高い病態の除外にしか目が向 いていませんでした。 それに、急性期ではない化学療法目的での入院の患者さんにも、入院時の血液データをプ リントアウトして渡して説明して満足していました。「腫瘍マーカーの数値は悪くなって ませんね」なんて目先の病態のデータにとらわれていて、患者さんが何を考えているかを 慮る余裕がなかったことに気付きました。 データを伝えることが、患者さんに自分自身の事についてを伝えているわけではない、と いう当たり前な事実に気付きました。(難しいですが)十分なListenがあってこそ のExplainであるとわかりました。 それに午後からの家族面談はそれぞれの思いを受け止めて、誰も悪者にしないということ の難しさを感じました。 家族面談には、研修医として立ち合った経験があります。外科のインフォームドコンセン トは、「患者さんに理解してもらう事」というよりも「裁判で訴えられないこと」を目的 としていたように感じました。それに、面談には観察者としてしか入らない(オーベンが 説明する)ので、事前に計画を立てたりというようなことはしていませんでした。 将来、自分が面談に入るという事を想定してもう少し積極的に面談を観察すれば勉強にな るだろうと思いました。 今回、LEARNのListenの難しさが本当に身に沁みました。 自分の問診を誰かが観察してフィードバックをもらえなかったので、悪い癖に気付きませ んでしたが、 これから少しずつ毎日の生活で努力しようと思います。 研修医としての今回の参加は本当に意義深いものでした。